私がミュージカルに憧れていた頃……美奈子さん、あなたはすごかった。

ミュージカルばかり見ていた時期があった。
いつしか自分も舞台に立ちたいと思うようになり、バレエのレッスンに通ったり
ミュージカルのCDに合わせて歌ったりしていた。
ある日手にした一枚のCD。それは当時もう間もなく上演される話題のミュージカル
ミス・サイゴン の日本キャストバージョンだった。
一番好きだったのが本田美奈子さんの 命をあげよう という曲だった。
愛するアメリカ兵との間にできた子供をたった一人で産み育てたキムの叫び。
本田美奈子さんの歌声はとにかく迫力があった。
ガツンと伝わってくる何か…。
まだ舞台を観ていないのに私の中のキム像は美奈子さんの歌声で出来上がっていた。
それから実際の舞台を観に行きますます彼女のパワーに圧倒された私は、
何度も何度も真似をして”命をあげよう”を歌った。
やっぱりかなわないなぁ、と思いながら…。

 

そして数年後、ある役者さんの付き人として レ・ミゼラブル のウラに入ることになった
私は、 本田美奈子さん その人に実際お会いすることができた。
かわいらしくて、めちゃめちゃ細くて、舞台に立った時のあのパワーはどこからくるのか不思議だった。
私はいつも美奈子さんが歌うエポニーヌの オン・マイオウン を聴くのが楽しみだった。
時として美奈子さんは、歌の出始めで建物のセットを叩いて感情を表していた。
ほんと、”歌う”というより”魂の叫び”という感じだった。

 

ミュージカル女優はとっくの昔に諦めたけれど、未だに美奈子さんの真似をして大声で歌うことがある。
最近密かに、琵琶界の本田美奈子になろうと勝手に思っていた。
あのパワー……、人々を魅了した歌声は分野は違えど通じるものがある。
そう思っていた矢先の悲しいニュースだった。悔しくて、残念で、何と言えばよいのか。

 

どうか安らかにお眠り下さい。
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