かさじぞう

かつて”詩とメルヘン”という月刊誌があった。編集長はアンパンマンの作者・やなせたかしさん。読者が投稿した詩に第一線で活躍する画家が絵を添えるという趣向で、言葉と美しい絵の組み合わせにワクワクしながらぺージをめくったものだった。その頃私が夢中になったのが黒井健さんの絵。色鉛筆で描かれる優しい色合いの作品を眺めていると幸せな気持ちになれたのだ。子育てをする前から黒井さんの”ころわんシリーズ”や”ごんぎつね”は知っていたけれど、実際に息子に読んで聞かせた時には感慨深いものがあった。

今回息子の小学校で絵本の読み聞かせをする機会があり、私が選んだ本は”クリスマスのころわん”と”かさじぞう”。季節を考慮した2冊だが偶然にも両方とも黒井健さん作画の本で、我ながら良き選択だったと思っている。

クリスマスや年越しという年末年始の行事、そして外国の文化と日本の風習。10分間でその二つを伝えたいという欲張りな私。しかし実は何よりも”かさじぞう”のおじいさんの慈愛の心を伝えたかったのだ。クラスのほとんどの子供がこの話を知っている、と手を挙げたのだが、もっと深く味わって欲しいと心を込めて丁寧に読みすすめた。松谷みよ子さんのこの”かさじぞう”では、六地蔵はおじいさんとおばあさんの亡くなった我が子の姿だったと書いてある。子育てが難しかった時代に辛い思いを抱えて生きてきた夫婦の話だと。今までそんな風に考えた事がなかった私が、子育てをしている身でこの話を読む。そう、今だから本当の意味で読める本。やはり年を重ねる事は悪くない。

「じいもばあもまめでなぁ。」
地蔵さんが去りながら呼びかける言葉にグッとくる。
”まめでなぁ”。
何ていい言葉だろう!!そう云えば”中国地方の子守唄”にも「一生この子のまめなよに」という歌詞があり、この部分を特に大切に歌うようにしている。(※琵琶で時折歌います)
子供たちに伝わったかなぁ、伝わらなくてもこの言葉の響きを覚えていて欲しいなぁ。そう願って教室を後にしたのだった。

話は少し戻るが、”詩とメルヘン”には巻頭にやなせたかしさんの編集前記があった。「ところで あなたは…」という問いかけで終わる文章が毎月気になって、購入できない時はその部分だけを本屋で読んでいた。たまたま”かさじぞう”に通じる編集前記をみつけたので、ここに記してみる。30年もの間、自ら表紙画を描き編集もしていたやなせさん。ここから新たな才能が巣立ってゆくのが何よりの喜びだったという。巻頭にあるまっすぐな言葉が、少女だった私の道標になった事もありました。2020年の今、改めて噛みしめる。

人は人をよろこばせたい
それ以外に何もない
たとえばピエロだったとしても
あるいはパン屋さんだったとしても
もしもまちがって
総理大臣になったとしても
世界的な学者と尊敬されても
すべて
人をよろこばせることが
その人のよろこび
ぼくもそう思う
だからぼくのように鈍重に生まれても
全力をつくして
人をよろこばせたい
それ以外に何もない
ところで あなたは……。

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